時刻

ハチ公バスのバス停で、時刻表に書かれた時間から20分経過してもバスもハチ公も来なかった。
10分過ぎた頃からは意地になって待っていたが、来る気配が全くなく、とうとう根負けして都営バスに乗った。
車中、私が待っていたあのバス停は、近所の人が作ったオブジェだったのではないかと思い始めた。
タイトル『ハチ公バスのバス停』という現代アートなのかも知れない。
もしくは「ハチ公」ではなく「パチ公」であって、偽物のバス停だったのかも知れない。
あぁ、いつもの私の早合点か。
今思えば、バス停だと思い込んでいたものは、季節外れの背の高いひまわりだったのかも知れないし、粗大ゴミで出された扇風機だったかも知れない。
雨風強い中、そんな間抜けなモノの前に私はただひたすら来るはずのないハチ公を待っていたのか。
待つのはハチ公の方だと聞いているが。

お陰で予約していた時間を25分も遅刻してしまった。
おそらく二年振りくらいに髪を切りに行った。
ぼんやりしていたら月日が経っていたのだ。
そして、希望通りの髪型になった。
相変わらず店長の腕前は見事だ。
私のつたない説明で、よくくみ取れたもんだ。
色んな意味で、さすがプロフェッショナル。
「次は、半年後には来るように頑張ります。」と伝えると、
「では、来年ですね。」と言われたので、
「良いお年を。」と言って店を出た。