無難な話


人と話すのが苦手で話題が見付からない時に、まずは無難な話をすればいいと、例えば「天気の話」等と挙げられるが、私にとってその日の天気はなかなか重要な話題である。
漁業や農業を営んでいる訳ではないけれど、決して無難な話ではない。本気だ。只のOLにしては天気の話に私は本気だ。
洗濯が好きというよりは、洗濯物を自分の満足のいくような並びで干して、外出先でその洗濯物が日に当たり風にたなびく様を想像するのが私の幸せのひとつでもあるので、終日晴れだと思って抜群の配置で干してきた洗濯物を想像しほくそ笑んでいる所に、なんだか雲行きが怪しくなってきたなんて話題を出されたら、ただ聞き流すことなど出来ない。
しかし空を見ると天気が悪くなりそうなのは事実で反論も出来ない。もし無鉄砲に反論し打ち負かしたところで雨は降る。雨が降った上に関係も悪化する。一気に気分は沈む。
だから勿論、天気予報はマメにチェックしている。天気予報のアプリも山ほど入れている。
なのにギャンブル干しを度々するので、負けることもある。
幸い現居のベランダには天井があるので、雨が強く吹き込まない限りずぶ濡れになることはまずないのだが、洗濯物に関してはギャンブラーでチャレンジャーの私は、天井のない場所に突き出して干すこともあるので、うかうかしてはいられない。
そうなると、ギャンブル干しに負けたことと、洗濯物が濡れたことで倍ガッカリすることになる。
だから、人見知りの私が天気の話をしていると、なんとか無難に逃げていると思われるかも知れないが、そんなことはない。
その時の私の目は決して穏やかではない。